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コラム

映画『ジャスティス・リーグ』はスタジオに2時間へ圧縮され、ファンが4時間として取り戻した

2026.06.23 7 min read

2017年のジャスティス・リーグを失敗させたのは、監督交代でも脚本の質でもなかった。CEOが下した「上映時間2時間以内」という命令が、4億ドルの映画に何をしたかが問題の核心だ。

ザック・スナイダーが個人的な悲劇を理由に離脱した後、ジョス・ウェドンが引き継いだ再撮影で映画は大幅に書き換えられた。しかしその改変の背景には、スタジオの経営判断というもうひとつの力学がある。ワーナー・ブラザースCEOのケビン・ツジハラが課した上映時間の制限は、作品の完成よりもスタジオの財務スケジュールを優先した結果として、今も語り継がれている。

なぜスタジオは映画を短くしなければならなかったのか。その問いを追うと、ハリウッドの経営判断が制作現場に侵食するときに何が起きるかが見えてくる。

スナイダーが去った理由

ジャスティス・リーグ
© ジャスティス・リーグ — TMDB

2017年3月、撮影とポストプロダクションの途中でザック・スナイダーはジャスティス・リーグの監督を降板した。娘のオートムが自ら命を絶ったためだ。スナイダー自身がのちに明かしたところによれば、「作業を続けることが不可能になった」という判断だった。ワーナー・ブラザースは公式に哀悼を表明し、スナイダーの離脱を発表した。

後任として指名されたのは、マーベルの『アベンジャーズ』(2012年)と『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)を手がけたジョス・ウェドンだった。チームムービーを興行成功させた実績を持つ監督として、ワーナーは彼を選んだ。しかしこの選択は単なる補完人事ではなかった。ウェドンの起用は、スナイダーが構想していた映画の方向性そのものを変える転換点になった。

スナイダーのオリジナル版がどこまで完成していたかについては諸説ある。撮影そのものはほぼ終わっていたが、編集とポストプロダクションは手つかずの状態だった。ウェドンが引き継いだのは素材の山であり、その山から何を使い何を捨てるかを決める権限が、彼に与えられた。

CEOが課した2時間の制限

ジャスティス・リーグ
© ジャスティス・リーグ — TMDB

なぜ「2時間以内」だったのか

ウェドンが再撮影を進めていた時期、ワーナー・ブラザースCEOのケビン・ツジハラは上映時間に関する明確な方針を示した。前作『バットマン vs スーパーマン:ドーン・オブ・ジャスティス』(2016年)が151分という長尺で批判を受けたことへの反省として、ジャスティス・リーグは2時間以内に収めるよう指示が下りた。Colliderをはじめとする複数の映画メディアが当時この方針を報じており、最終的な上映時間は1時間59分となった。数字の上では1分の余裕だった。

この制限が何を意味するかは、数字を並べると明確になる。スナイダーが構想していたオリジナル版は約4時間とされる。そこから1時間59分へ——半分以下の尺に収めることが、ウェドンに課された条件のひとつだった。カットされた内容の多くは、サイボーグ(ビクター・ストーン)を中心とした各キャラクターのドラマ、黒幕ダークサイドとの伏線、世界観の拡張に関わる場面だったとされる。

ボーナスと公開スケジュールの関係

2時間制限の背景として、複数のメディアが指摘した要因がある。ワーナー上層部は公開日の延期を強く拒んだとされており、その理由のひとつとして役員報酬の算定サイクルが挙げられた。映画の興行収入が特定の会計期間内に計上されるかどうかは、経営陣のボーナス評価に直結する仕組みがある。この指摘に対し、ワーナー側からの公式な否定も肯定も出なかった。

確認されている事実は、映画が予定通り2017年11月に公開されたことと、製作費が約3億ドル、マーケティング費用を含めると4億ドル超に達していたことだ。全世界興行収入は約6億5700万ドルで、損益分岐点を大幅に下回った。DCEUの中でも最も商業的に失敗した作品として記録されている。

ウェドンの改変と現場の崩壊

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© ジャスティス・リーグ — TMDB

何が書き換えられたか

ウェドンによる再撮影の規模は、通常のリシュートとは次元が異なった。トーンは意図的に明るくコミカルな方向へ変更され、スナイダー版のダークな色調は薄められた。サイボーグの物語——父との和解、事故の経緯、人間性の回復——は大幅にカットされ、キャラクターとしての重みが失われた。スーパーマン役のヘンリー・カヴィルは再撮影時に別映画の契約でヒゲを剃れず、CGによるヒゲ除去が施されたが、口元の不自然さはリリース後に広く指摘された。

スナイダーが撮影した素材がどれだけ使われたかについての公式な数字はない。完成した劇場版は、スナイダー版の素材を基盤としながらもウェドンの大幅な書き換えが混入した状態だったとされる。2人の監督の作風が一本のフィルムに混在した結果、批評家スコアは39%にとどまった。Fox時代のX-MENやソニー時代のスパイダーマンが権利の縛りによって品質を損なったのとは異なる構図だが、スタジオの商業判断が映画の完成度に直接干渉するという点は共通している。

レイ・フィッシャーの告発

2020年夏、サイボーグ役のレイ・フィッシャーがSNSでウェドンの現場での行為を公に告発した。「下劣で、パワハラ気質で、プロ意識に欠ける」という言葉を用い、ウェドンおよびワーナーの幹部を実名で名指しした。告発の内容には、サイボーグのシーン削除が恣意的に行われたこと、フィッシャーが意見を述べた際に封じられたこと、ガル・ガドット(ワンダーウーマン役)が「キャリアをめちゃくちゃにする」と脅されたという証言が含まれた。ガドット自身もこれを否定しなかった。

ワーナーメディアは第三者機関を交えた調査を実施した。80人以上が証言に応じた調査の結論は「カットは人種差別的動機ではない」というものだった。是正措置が取られたとされたが、具体的な内容は非公開のままだ。フィッシャーは結果を不服として全公開を要求し、調査の透明性を問い続けた。ウェドンはその後、過去作のキャストからも類似の証言が相次ぎ、ハリウッドの表舞台から事実上退いた。

ファンが動かした前例

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© ジャスティス・リーグ — TMDB

#ReleaseTheSnyderCutの始まり

劇場版の公開直後から、スナイダーが撮影した本来の映画が存在するはずだという確信がファンの間に広がった。2018年頃から#ReleaseTheSnyderCutというハッシュタグがソーシャルメディアで急速に拡散し、ニューヨークのタイムズスクエアに広告を出稿したり、飛行機による空中広告を自費で依頼するファンが現れた。ベン・アフレック(バットマン役)やジェイソン・モモア(アクアマン役)らキャスト陣がこの運動を公に支持したことで、運動はスタジオと個人の対立という性格を持ち始めた。

当初ワーナーは「スナイダーカットは存在しない」という立場を維持した。未完成の素材がある状態を指してそう表現したのか、公開できる形ではないという意味だったのかは明確にされなかった。スタジオと映画の関係において、ファンの声がスタジオの決定を覆した前例はほとんどなかった。

HBO Maxが動かした決断

状況が変わったのは、ワーナーメディアが配信サービスHBO Maxを立ち上げた時期だった。プラットフォームの目玉コンテンツを必要としていたHBO Maxにとって、スナイダーカットの完成・配信は有効な施策として機能した。スナイダーに追加予算が与えられ、未撮影の場面の一部が新たに撮影された。2021年3月、4時間2分の『ザック・スナイダーズ ジャスティスリーグ』がHBO Maxで公開された。

批評家スコアは76%——劇場版の39%から37ポイントの上昇だった。ジョス・ウェドンが撮影した素材を一切使わず、スナイダーの映像だけで再構成した作品は、劇場版とはほぼ別の映画として評価された。スナイダーが構想していたサイボーグ中心の筋立て、ダークサイドの登場、各キャラクターの背景が復元された。

スタジオが証明してしまったもの

ジャスティス・リーグ
© ジャスティス・リーグ — TMDB

スナイダーカットの好評は、ワーナー・ブラザースにとって単純な成功ではなかった。絶賛されればされるほど、2017年の経営判断が誤りだったという証明が世界規模で行われる構図になった。CEOのランタイム命令、公開延期の拒否、ウェドンへの権限委譲——これらが映画を壊したという評価が、スナイダーカットの存在によって事実として確定した。

ファンの運動は次の段階へ進んだ。#RestoreTheSnyderVerse——スナイダーが構想していたDCの世界観をそのまま映画化し続けろという要求だ。ワーナーメディアCEOのアン・サーノフは「スナイダーカットでこの物語は完結した。続編はない」と声明を出したが、ファンはこれを拒絶した。

その後のDCEUは一貫した方針を打ち出せないまま複数の大作が興行的に苦戦し、2022年10月にワーナー・ブラザースはジェームズ・ガンとピーター・サフランをDCスタジオのCo-CEOとして招聘し、ユニバースをゼロから再構築する決断を下した。スナイダーが構想したDCの世界観は、公式には終わりを告げた。

ジャスティス・リーグの失敗が残したのは、スタジオの経営判断が制作現場を上回るとき映画はどう歪むかという記録だ。そしてスナイダーカットの成功が残したのは、その歪みをファンが4年かけて一度だけ修正できたという、ハリウッド史上ほぼ前例のない事実だった。

ジャスティス・リーグ

ジャスティス・リーグ

Justice League

  • 監督ザック・スナイダー
  • 公開2017年
  • 上映時間120分

ブルース・ウェインは、スーパーマンの捨て身の行動に影響を受け、再び人類を信じるようになる。彼は新たな相棒ダイアナ・プリンスの手を借り、強敵との戦いに備えて準備を進める。バットマンとワンダーウーマンとしてお互い協力を約束した彼らは、共に戦ってくれるヒーローたちを集める。

2026.07.22 取得 · 変更の場合あり

この記事を書いた人

FISHBONE 編集部

映画をもう一層深く楽しむための考察・コラムを届けるウェブメディアです。